インボイス制度における旅費交通費精算について
現行の区分記載請求書等保存方式では、取引価額が税込3万円未満の場合や、請求書等の交付を受けられなかったことにつき「やむを得ない理由」があるときは、請求書等の保存がなくても一定の帳簿保存で仕入税額控除が認められます。インボイス制度では、この2つの措置が廃止されるものの、法令で明示された9つの類型の取引については、引き続き帳簿のみ保存による仕入税額控除が可能となります。今回は、この9つの取引、旅費交通費精算における適格請求書の保存が必要となる取引・帳簿のみ保存で良い取引についてご報告致します。
① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
(①に該当するものを除く)
③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の取得
⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
従業員の立替払いか出張旅費の支給かで取り扱いが異なります。
従業員の立替払い | 出張旅費の支給 | |
インボイスの要否 | 原則、会社宛のインボイスが必要となりますが、従業員宛のインボイス+従業員の作成した立替金精算書でも問題ありません。 | インボイスは不要です。出張旅費等特例を利用し、「その旅行に通常必要であると認められる部分」※については、帳簿のみ保存で仕入税額控除が認められます。 ※ 所得税基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》に基づき判定し、帳簿に出張旅費等特例である旨を記載する必要があります。 |
帳簿のみ保存の特例 | ■3万円未満の公共交通機関運賃 ・公共交通機関特例を利用し、帳簿に公共交通機関特例である旨を記載する必要があります。 ■3万円以上の公共交通機関運賃(券回収) 入場券等回収特例を利用し、帳簿に入場券等回収特例である旨、仕入の相手方(公共交通機関)の住所等の記載が必要となります。 |
MEMO
【災害を受けたときの所得税の取り扱いについて】
災害によって※住宅や家財に損害を受けた場合、災害減免法( 災害によって大規模な被害を受けた場合に所得税そのものが減免される)によって所得税が軽減免除されます。災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下の方で震災、風水害、火災などの災害によって受けた損害額が住宅または家財の価額の2分の1以上で、かつ、雑損控除の適用を受けない場合、所得金額に応じて所得税額が軽減免除されます。
所得金額が500万円以下の方は全額免除、500万円超え750万円以下の方は2分の1、750万円超え1,000万円以下の方は4分の1を所得税額が軽減されます。
また、給与所得者が災害減免法により源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予または還付を受けた場合は年末調整されませんので、確定申告により所得税および復興特別所得税を精算することになります。この軽減免除に代えて雑損控除の適用を受けることもできます。
※住宅や家財とは、本人またはその者と生計を一にする配偶者その他の親族でその年の総所得金額等が48万円以下である者が所有する住宅または日常生活に通常必要な家具や衣服、書籍その他の家庭用動産のことです。別荘や書画、骨とう品などの娯楽品等で生活に必要な程度を超えるものは含まれません。