【第15回法人税】 研究開発税制について
今回も前回に引き続き研究開発税制についてご案内致します。前回は制度の概要と対象となる試験研究費をご案内しました。今回は4つの税額控除パターンの内、平成27年で改正された「総額型」と「オープンイノベーション型」の具体的な内容についてご案内致します。
(総額型)
税額控除額は、法人税額の25%(平成27年の改正で控除上限額が法人税額の30%から25%となりました)を上限に以下の様に求められます。
税額控除額=試験研究費の総額×控除率(8~10%、中小法人は12%)
控除率=8%+試験研究費割合×0.2
試験研究費割合=試験研究費の額÷平均売上金額(当該事業年度以前4年間の平均)
(オープンイノベーション型)
税額控除額は、法人税額の5%(改正前は税額控除限度額は総額型と合わせて判定していましたが、平成27年の改正で別枠化されました)を上限に以下の様に求められます。
税額控除額=特別試験研究費の総額×控除率(20%又は30%)
特別試験研究費の額とは、試験研究費の額のうち、国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究、中小法人に委託する試験研究等が該当します。また、平成27年の改正で中小法人が有する知的財産権の設定、使用又は許諾を受けて行う試験研究の額が追加されました。
控除率はこれまで一律12%でしたが、国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究は30%に、中小法人に委託する試験研究、中小法人が有する知的財産権の設定、使用又は許諾を受けて行う試験研究は20%となっています。また、大学との共同研究や中小法人に支払う知的財産権の使用料などは公認会計士又は監査法人等の監査を受ける必要があります。
※オープンイノベーション型で控除しきれなかった特別試験研究費は、試験研究費として総額型で控除できます。
(繰越控除制度の廃止)
平成27年の改正により控除額の繰り越しが廃止されました。繰越控除制度自体が廃止されるため、改正前に発生した繰越額についても廃止されます。
MEMO
【個人事業主と法人について】
独立や開業を考える際、個人事業主として開業するか、それとも法人として会社を設立するか迷うところだと思います。
個人事業主として開業する場合は開業届けを税務署に提出すれば誰でも事業を始めることができます。法人登記も必要ないため設立費用もかかりません。そのかわり赤字は3年までしか繰越をすることができないなど、税金面でのメリットは法人に比べて敵いません。
一方、法人として開業する場合は定款作成や法人登記を行う必要があります。それ以外にも様々な役所へ届出を提出しなければならず、開業費用も登記の際の登録免許税に約15万円、定款の印紙代・手数料に約10万円、合計で30万円ほどかかります。さらに健康保険などの各種社会保険への加入が義務付けられています。
個人事業に比べて厳密な会計処理が必要になり、決算や税務申告のため会計事務所のサポートが必須となります。また、事業が赤字であっても法人住民税は必ず納付する必要があるため最低でも約7万円の税金がかかります。しかし複雑な手続きや費用がかかる分、社会的信用性が高く、金融機関からの融資が受けやすいというメリットがあります。
個人にも法人にも様々なメリット・デメリットがありますが、気軽に始めてみたい方や売上が数百万円ほどでしたらまずは個人事業主から始めるとよいと思います。