【第10回法人税】棚卸資産の廃棄について
期末棚卸高の増加は税負担の増加にも繋がります。販売業の売上原価は、「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」という算定式で求められるため、期末棚卸高が増加すると売上原価が圧縮されその分だけ利益が増加するからです。期末棚卸高の増加の一因として不良在庫が考えられますが、それに伴う税負担の増加を解消する方法として前回ご案内した評価損の計上、そして今回ご案内する廃棄損の計上が挙げられます。
棚卸資産廃棄損は安易な税負担の軽減に繋がりやすいため、税務調査においても特に注目されやすい勘定科目です。また、棚卸資産廃棄損に関しては法人税法上において具体的な要件を定めている規定がないため、損金として認められるには廃棄の事実及びそれを証明できる以下の証拠を用意することが重要となります。
・廃棄に関する記載がある取締役会議事録
・社内ルールに基づいた稟議書
・名称、購入時期、購入金額が記載された廃棄棚卸資産のリスト
・廃棄業者への引き渡し時の写真
・廃棄業者からの請求書
上記証拠は一例ではありますが、廃棄業者からの請求書などの外部証拠はもちろんのこと、これらと整合する取締役会議事録や稟議書といった社内で用意できる内部証拠も併せて用意できれば廃棄の事実を示す証拠力はかなり強いものと考えられます。
上述した通り棚卸資産廃棄損を認める具体的な要件は規定されていないため、上記の証拠を用意すれば必ず損金として認められるとは言い切れませんが、廃棄の事実とそれを証明できる十分な証拠があれば税務上問題となることは少ないと考えられます。
MEMO
【退職金にかかる税金について】
退職時に勤務先から支給される退職金には、退職所得として所得税(復興特別所得税)と住民税がかかります。
退職所得は、給与や不動産所得などの他の所得のように総合せず、個別に所得税(復興特別所得税)と住民税が計算されます。「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、以下の計算式により算出した税額が源泉徴収されることとなります。
~所得税等の計算~
①退職所得控除額の計算
・勤続年数が20年以下の場合 … 40万円×勤続年数
・勤続年数が20年超の場合 … 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
↓
②課税所得金額の計算
(退職手当等の金額-退職所得控除額)×1/2 = 課税退職所得金額(1,000円未満切捨)
↓
③税額の計算
( 課税退職所得金額 × ※税率 - ※控除額 ) × 102.1% = 退職金にかかる所得税
※課税所得金額に応じて「税率」「控除額」は異なります。
「退職所得の源泉徴収額の速算表」を参照して下さい。
なお、この他に住民税が下記のように徴収されます。
・都道府県民税 … ③ × 4%
・市町村民税 … ③ × 6%