マンスリーカルチャー
平成31年3月
3月は、卒業式のシーズンです。街のあちらこちらで、袴姿の女性や着飾った若者が綺麗な花を胸に挿して歩く姿が見られます。そして、大人の世界では年度末の人事異動の多い時期で、人の行き来が多い季節でもあります。そのような別れの際に我々日本人は「さようなら」と伝えますが、この言葉の意味をあまり気にしないで使っています。しかし、この言葉に強く感銘を受けた外国人がいました。かつて、大西洋横断単独無着陸飛行を初めて成し遂げたチャールズ・リンドバーグのアン夫人がその人です。
アン夫人は自身のエッセイの中で
「『さようなら』とこの国の人々が別れに際して口にする言葉は、もともと
『そうならねばならぬのなら』という意味だと教えられた。
『そうならねばならぬのなら』とはなんという美しいあきらめの表現だろう。
これまで耳にした別れの言葉のうちで、このように美しい言葉を私は知らない。
西洋の伝統では、神が別れの周辺にいて人々を守り、再会を期している、という思いがあるが、日本人は別れに臨んで、『そうならねばならぬのなら』と諦めの言葉を口にする。サヨウナラは、言い過ぎもしなければ、言い足りなくもない。それは、事実をあるがままに受け入れている。」(以上は骨子です)
日本の文学作品を多数海外に紹介して、日本文学の地位向上に大いに貢献したドナルド・キーン氏が先月他界されましたが、彼も日本語の美しさに魅了された一人でしょう。
私たち日本人がもっと日本語の良さに気づき、我々自身がそれを後世に伝えていくことが大切のように思いますが、いかがでしょうか。