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2016年 第1号 「 繰延税金資産の回収可能性の判断基準の見直し 」


1.はじめに

 我が国における税効果会計は、平成10年10月に企業会計審議会から「税効果会計に関する会計基準」が、それを受けて日本公認会計士協会から税効果会計に関する会計上の実務指針が公表され、平成12年3月期から実務に導入されております。その翌年には、金融商品会計に関する会計基準、退職給付会計に関する会計基準等が実務に適用され企業会計は大きく変更になりました。その先駆けが税効果会計の導入であると思われます。
 税効果会計の導入以来、16年が経過致しましたが、今回、企業会計基準委員会から繰延税金資産の回収可能性の判断基準の見直しが行われております。
 繰延税金資産の回収可能性(将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうか)については、従来より、十分に検討し、慎重に決定しなければならないことになっています。
 今回は、見直しされた繰延税金資産の回収可能性の判断基準についての概要を説明することといたします。

2.適用指針第26号の公表

 資産負債法による我が国の税効果会計における繰延税金資産の回収可能性の判断基準は、日本公認会計士協会の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」等によっておりましたが、監査委員会報告第66 号に対する問題意識が特に強く聞かれることから、企業会計基準委員会において繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針が先行して開発することとされました。
 その結果、監査委員会報告第66号等において記載されている繰延税金資産の回収可能性に関する定めについて、基本的にその内容を引き継いだ上で、必要と考えられる見直しが行われ、企業会計基準適用指針第26 号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、「適用指針第26号」という。)を、公開草案により意見を求めた上で平成27年12月28日に公表されております(その後、平成28年3月28日付で適用指針第26号の一部が改正されております。)。  

(注)日本公認会計士協会では、上記の適用指針第26号の公表を機に次の第66号及び第70号を平成28年1月19日付で廃止しています。
・「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第 66 号)
・「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第 70 号)

3.適用指針第26号の概要

(1)企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
 監査委員会報告第66 号における企業の分類に応じた取扱いを撤廃する場合には実務への影響が大きいと考えられることから、適用指針第26号では当該取扱いの枠組み(企業を5つに分類し、当該分類に応じて繰延税金資産を見積もること)を基本的に踏襲し、当該取扱いの一部について必要な見直しを行なっております。  

 (5分類の枠組みを踏襲した理由)
 将来年度の会社の収益力を客観的に判断することは、実務上、困難な場合が多いので、過去の業績等を主たる判断基準とする、すなわち、企業を5つに分類し、当該分類に応じて繰延税金資産の計上額を見積る枠組みを採用している。  

 また、監査委員会報告第66号では5つの分類が例示区分という例示としての取扱いでしたが、適用指針第26号では会計上のルールとして分類ごとに要件を設定し、要件に基づき企業を分類して、当該分類ごとに繰延税金資産の計上額を決める建付けとされています  

 なお、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異(退職給付引当金や建物の減価償却超過額)に係る監査委員会報告第66号や固定資産の減損損失に係る監査委員会報告第70号は、見直さないで基本的に踏襲されています(適用指針第26号第35項、第36項)。  

(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応3)
 IFRSを任意適用する企業が多くなってきた中で画一的な分類を踏襲することは、コンバージェンスの動向に逆行している。
 →今後のIFRSの任意適用の進展状況も勘案する必要があるため、分類規定の撤廃に関して検討を行うことは、今後の検討課題とする。

(2)(分類 1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業の取扱い
 適用指針第26号では、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、要件に基づき企業を(分類1)から(分類5)に分類することになりますが、(分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することとされています(適用指針第26号第15項、第16項)。  

(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応21)
 要件からの乖離度合いが小さいと判断されるものに必ず分類するといった事例はどんなものか明確でない。
→例えば、(分類1)の要件、
 ① 過去(3 年)及び当期のすべての事業年度に将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
 ② 近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
 のうち、②の要件を満たしていない場合があり、このようなケースが想定される。

(3)(分類 2)及び(分類3)に係る分類の要件の見直し
 監査委員会報告第66 号では、(分類2)及び(分類3)について、「経常的な利益(損益)」という会計上の利益に基づく要件としていたのに対し、適用指針第26号では、「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」という課税所得に基づく要件に変更されています(適用指針第26号第19項、第22項)。
 これは、受取配当金の益金不算入額のように永久に益金又は損金に算入されない項目が生じること等により会計上の利益の額と課税所得の額が通常は一致しない中で、企業を分類するにあたって重視すべき要件としては課税所得がより適切であると考えられたためであるとされています。
 なお、課税所得から「臨時的な原因により生じたもの」を除くこととしていますが、これは過去に生じた臨時的な原因により生じた益金又は損金は、将来において頻繁に生じることは見込まれないという推定に基づいています。

(分類2に係る分類の要件)

監査委員会報告第66号 適用指針第26号
過去の業績が安定している会社等、すなわち、当期及び過去(おおむね3年以上)連続してある程度の経常的な利益を計上しているような会社等 過去(3 年)及び当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。

(分類3に係る分類の要件)

監査委員会報告第66号 適用指針第26号
過去の業績が不安定な会社等、すなわち、過去の経常的な損益が大きく増減しているような会社等 過去(3 年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している。

また、従来、「課税所得」という用語が、当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額を加算(減算)する前の金額として使用されている場合もあれば、すべての項目について加算及び減算をした後の金額として使用されている場合も存在していました。
 そのため、適用指針第26号では、当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額を加算(減算)する前の金額であることを示す「一時差異等加減算前課税所得」を定義し、当該用語が使用されています(適用指針第26号第57項)。定義付けがされても内容は新しいものではないとされています。

  ・一時差異等加減算前課税所得の定義(適用指針第26号第3 項(9))
 将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額(及び該当する場合は、当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額)を除いた額をいう。  
(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応87)
 「一時差異等解消前課税所得」とすべきである。
 →「加減算」は課税所得の算出手続に関する用語である一方、「解消」は会計上の繰延税金資産の回収可能性に関しても用いられる用語である。「一時差異等加減算前課税所得」は課税所得の見積り過程において、当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額を除くものであるため、会計上の用語に用いられる「解消」でなく、課税所得の算出手続に関する用語である「加減算」を用いる方が内容に即しており適切であると考えられる。  

 (4)(分類 2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取扱い  監査委員会報告第66 号では、(分類2)に該当する企業においては、「スケジューリング不能な将来減算一時差異」について、一律に繰延税金資産を計上することができないとする取扱いが示されていましたが、当該取扱いは企業の実態を反映しない場合があり、また、国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準を適用している場合には、繰延税金資産を計上している実務がみられるとの意見が聞かれていました。  そのため、適用指針第26号では、(分類2)に該当する企業においては、「原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとする。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。」とされています(適用指針第26号第21項)。  なお、公開草案では、原則とは異なる取扱いに関して「合理的に説明できる場合」となっていましたが、適用指針第26号では、「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」に変更されています。これは、企業の検討に基づき適用する場合にのみ原則とは異なる取扱いを容認することを意図しているため、その意図を明確にするため検討を行う主体が企業であることが、また、当該検討においては根拠が必要であることが明示されています(適用指針第26号第78項)。

 (分類2におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取扱い)

監査委員会報告第66号 適用指針第26号
一時差異等のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産を計上している場合には、回収可能性があると判断できる。 ・原則 回収可能性はない。
・例外 税務上の損金算入時期が個別に特定できないが、将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるもの→将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、回収可能性はあるものとされる。

また、(分類2)におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものの具体例な事例としては、次のものが記載されています。
① 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異
 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異は、役員在任期間の実績や内規等に基づいて役員の退任時期を合理的に見込む方法等によりスケジューリングが行われるが、スケジューリングが行われていない場合でも、いずれかの時点では損金算入されるものであるところから、スケジューリング不能な将来減算一時差異として取り扱われることとされています(適用指針第26号第37項、第106項)。

② いわゆる政策保有株式のうち上場株式の減損に係る将来減算一時差異
 業務上の関係を有する企業の株式(いわゆる政策保有株式)のうち過去に減損処理を行った上場株式について、当期末において、株式の売却時期の意思決定を行っていないが、市場環境、保有目的、処分方針等を勘案すると将来のいずれかの時点で売却する可能性が高いと見込む場合がある。
 この場合、当該上場株式の減損に係る将来減算一時差異は、スケジューリング不能な将来減算一時差異に該当することになると考えられている(適用指針第26号第75項)。

(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応47、48)
 役員退職慰労引当金のように、明らかに将来のいずれかの時点で解消することが見込まれるものは、会社が何ら説明を行わない場合でも回収可能性があるのか。
→将来のいずれかの時点で解消されるものであるため、その点の説明は不要と考えられるが、将来減算一時差異の残高と課税所得の水準との関係から回収できることについて合理的な根拠をもって説明することが必要。

(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応40、34)
 合理的な説明を行わない場合は繰延税金資産が計上されず、合理的な説明を行った場合は、繰延税金資産が計上されるということになるのか。
→ 「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」に関する取扱いは、原則的な定めに対して、繰延税金資産の計上額が企業の実態をより適切に反映したものとなることを意図して、原則とは異なる取り扱いを容認するものである。

 (5)(分類 3)に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間(5年超)に関する取扱い
 監査委員会報告第66 号では、(分類3)に該当する企業においては、「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)内の課税所得の見積額を限度額」として、繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとされていた。 
 当該取扱いは、「おおむね」という表現が用いられているものの硬直的に運用されており、また、一律に5 年を限度とすることは、企業の実態を反映しない可能性があるものと考えられていた。
 そのため、適用指針第26号では、(分類3)に該当する企業においては、中長期計画、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとされています(例外的取扱い)(適用指第26号針第24項)。

(分類 3)に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間(5年超)に関する取扱い

監査委員会報告第66号 適用指針第26号
将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)内の課税所得の見積額を限度として、回収可能性はある。 ・原則 将来の合理的な見積可能期間(おおむね 5 年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、繰延税金資産を見積る場合、回収可能性はある。 ・例外 5 年を超える見積可能期間 においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、回収可能性はある。

なお、(分類3)に該当する企業において、中長期計画、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合の具体的な場合として次のものが、記載されています(適用指針第26号第85項)。
① 製品の特性により需要変動が長期にわたり予測できる場合
② 過去においては課税所得が大きく増減していたが、長期契約が新たに締結されたことにより、長期的かつ安定的な収益が計上されることが明確になる場合

(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応57)
 5年を超える見積可能期間の繰延税金資産について回収可能とする取扱いは、何を満たせば「合理的か」判断が難しい。企業の中長期的計画(通常は5年が最長)を超えた期間の課税所得の見積りを合理的と判断するのは難しい。
→(分類3)の企業において、将来の合理的な見積可能期間について、一律に5年を限度とすることは企業の実態を反映しない可能性があると考えられるため、5年を超える見積可能期間の繰延税金資産について一定の要件を満たす場合、回収可能とする取扱いを定めている。繰延税金資産の計上額が企業の実態をより適切に反映したものになることを意図して、原則とは異なる取扱いを容認するものである。詳細に示すと却って実態にあった判断を妨げる可能性がある。

 (6)(分類 4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い
 監査委員会報告第66 号では、例示区分4に該当する企業は、原則として翌期1年分しか繰延税金資産の計上が認められませんが、重要な税務上の繰越欠損金が事業のリストラクチャリングなどによる「非経常的な特別の原因」により発生した場合には、「おおむね5年」内を限度として回収可能性があるとする「ただし書き」があります。しかし、5年を超える課税所得を見積もることが実務的には認められず、硬直的に運用されているとの意見や非経常的な特別の原因の範囲が明確でないとの意見が聞かれておりました。
 そのため、適用指針第26号では、重要な税務上の繰越欠損金が生じていること等により、(分類4)の要件を満たす企業においては、重要な税務上の繰越欠損金が生じた原因、中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、
・ 将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するとき→(分類2)
・ 将来において、おおむね3 年から5 年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するとき→(分類3) 
 に該当するものとして取り扱うこととされております。

 また、(分類4)に係る分類の要件を満たすものの、(分類2)又は(分類3)として取り扱われる例として次のものが記載されております。
 なお、(分類4)から(分類2)への変更は、(分類3)に変更になるケースと比べるとかなり限定的な取扱いとなるとされています。

① (分類4)→(分類2)
 過去において(分類2)に該当していた企業が、当期において災害等による損失により、(分類4)の要件を満たすことになるが、将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを合理的な根拠をもって説明するとき(適用指針第26号第91項)。

② (分類4)→(分類3)
 過去において業績の悪化に伴い、(分類4)に該当していた企業が、当期に代替的な原材料が開発されたことにより、業績の回復が見込まれ、その状況が将来も継続することが見込まれる場合に、おおむね3 年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するとき(適用指針第26号第92項)。

(公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応90、91)
・公開草案では、「回収可能性があるものとする」との表現に統一され、監査委員会報告第66号では「判断できるものとする」との表現から変更されている。回収可能性があるものとされた将来減算一時差異については、必ず繰延税金資産を計上することになるのか。
・(分類1)に該当する企業が、一部のスケジューリング不能な将来減算一時差異について、繰延税金資産を計上しないことは認められるのか。
 →企業を5つに分類した上で、当該分類に応じた繰延税金資産の計上額が定められている。ある分類の要件を満たす企業において、回収が見込まれるとされる繰延税金資産の計上額を個々の企業の裁量で決定できる場合、企業間の比較可能性が著しく阻害される可能性がある。

 (7)適用時期等
① 適用時期
 適用指針第26号は、平成28 年4 月1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています(適用指針第26号第49項)。

 <早期適用>
 平成28 年3 月31 日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができることとされています。

② 適用初年度の取扱い
 適用指針第26号の適用初年度の期首において、次の項目を適用することにより、これまでの会計処理と異なる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取扱われることになります。それは監査委員会報告第66号の定めの内容を実質的に変更しているものに特定したことによるものとされております。
 過去の期間の財務諸表には遡及適用しないことになっております。

・(分類 2)に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い

・(分類 3)に該当する企業において、おおむね5年を明らかに超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能性であることを企業が合理的な根拠を持って説明する場合には回収可能性があるとする取扱い

・(分類4)の要件に該当する企業であっても、将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には(分類2)に該当するものとする取扱い

 なお、会計方針の変更に該当する上記3項目は、いずれも特別的な取扱いに該当するケースであると思われますので、会計方針の変更に該当する企業は少ないものと考えられています。会計方針の変更に該当しない場合には、適用指針第26号の適用は、追加情報の注記に該当することとされております。

 また、適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更による主な表示科目に対する影響額として次のものを注記することになっています(適用指針第26号第49項(5))。
  ・適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額、
  ・適用初年度の期首の利益剰余金に対する影響額、
  ・適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額
 当該年度の当期純利益に対する影響額については、監査委員会報告第66号等によった場合と比較した影響額の開示を求めた場合、影響を特定することが困難であるとの意見があるため除かれています(適用指針第26号第125項)。

4.おわりに
 日本公認会計士協会における税効果会計に関する会計上の実務指針のうち適用指針第26号に含まれないものについては、今後、企業会計基準委員会において検討が行われ、適用指針として開発される予定になっています。また、既に公開草案で公表されております次の開示についても見直しがされ、公表される予定となっております。
 ① 評価性引当額の内訳
 ② 税務上の繰越欠損金に関する情報
 ③ 企業の分類に関する情報
 ④ 合理的な説明に関する開示
 我が国の税効果会計は、今後も取扱いが改正されることになりますので十分に留意することが必要になります。

 以  上

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